受入検査で、注文上はオーステナイト系ステンレス鋼とされているボルトに磁石を近づけたところ、ボルト側へ引かれる反応があったとします。これは記録すべき観察結果ですが、材質証明そのものではありません。
磁石に引かれることだけで鋼種区分の誤りは証明できず、ほとんど反応しないことだけで指定材の適合も証明できません。まず対象品を包装・ロット表示と結び付けたまま区分し、注文で管理されている要求と書類を確認してから、未解決の問いに合う検証方法を選びます。
先に結論
磁石による一回の観察を、鋼種区分やロットの判定にしない
磁石で分かるのは、記録した条件で引力が認められたという事実です。それだけでは鋼種、ISO 3506 の区分、機械的性質、耐食性、ロット全体の合否は確定しません。反応は調査開始の手掛かりであり、自動的な受入れ、拒否、又は供給者の免責根拠ではありません。
Wohe Fastener に確認を依頼する場合は、注文書又は図面の正確な材質表記、製品規格、包装・ロット表示、ひも付く検査書類、磁石の観察条件を一緒に提示してください。Wohe は仕様、トレーサビリティ、検証資料のどこに不足があるかを整理し、供給者側の回答を調整できますが、磁石の反応から鋼種区分を認定する立場ではありません。
注文書の「ステンレス鋼」が何を指定しているか確認する
注文には、ISO 3506 の鋼種区分と強度区分が記載されている場合も、別の材料規格に基づく鋼種が記載されている場合も、単に「stainless steel」とだけ書かれている場合もあります。これらは同じ情報量ではありません。
ISO 3506-1:2020 は、同規格の適用範囲にある耐食ステンレス鋼製のボルト、ねじ及び植込みボルトを対象とし、ISO は 2025 年に現行版であることを再確認しています。ナットは別の ISO 3506-2:2020 が対象です。したがって、表記を読み替える前に、製品の種類と適用規格を特定する必要があります。
A2-70、A4-80、304、316 を無条件に同じ欄へ置き換えてはいけません。注文に実際に記載された表記と規格をそのまま保持します。異なる表記体系の関係が受入判定に必要なら、その注文に対して根拠を示し、当事者間で合意したうえで扱います。
別々に答える二つの問い
オーステナイト系ステンレス鋼品が条件によって磁石に反応することはあり得ます。しかし、その反応が当該ロットの注文材質への適合を証明するわけではありません。材料上の可能な説明と、適合判定は別です。
オーステナイト系でも磁石に反応することがある理由
Outokumpu のオーステナイト系ステンレス鋼に関する公式技術資料では、固溶化熱処理状態では非磁性である一方、冷間加工により一部の鋼種でマルテンサイトが生じ、磁性を示す場合があると説明しています。Carpenter Technology のステンレス鋼の磁気特性に関する資料も、化学成分と冷間加工の程度によって反応が異なり得るという境界を示しています。
この説明から分かるのは、磁石への反応が直ちに異材混入を意味しないことです。受入品の反応原因が冷間加工であると確定したわけではありません。材料、加工履歴、製品状態は、追跡できる証拠が揃うまで未確認です。また、すべての A2、A4、304、316 製品が冷間加工後に磁性を示す、又は引力の強さから鋼種や加工量が分かる、と一般化することもできません。
材質名を付ける前に、観察条件を残す
受入記録には、使用した磁石又は器具、接触の有無、ボルトのどの位置で反応したか、何点を確認したか、各サンプルがどの包装・ロット表示に属するかを記載します。再確認する場合は条件をできるだけ揃え、差は記録しますが、社内独自の「磁力等級」へ変換しません。
| 観察として記録できること | その観察だけでは確認できないこと |
|---|---|
| 特定の磁石、位置、接触又は距離条件で引力が認められたか | 正確な鋼種又は特定の A2/A4 区分 |
| どのサンプルと表示付き包装で同じ反応又は異なる反応があったか | 化学成分、強度区分、耐食性能 |
| 品物の識別を保持して追加確認する理由 | 原因が冷間加工であること、又はロット全体の受入れ・拒否 |
反対方向の推定もできません。反応が弱い、又は反応しないというだけで、ボルトが 304、316、A2、A4 であることや注文への適合は証明されません。
検証方法を選ぶ前に、注文・現品・包装・書類をつなぐ
疑義が解消するまでは、既存の包装又はロット識別を保って対象在庫を区分します。そのうえで、注文要求、現物ファスナー、包装又はロット表示、検査書類・試験報告の四つを結び付けます。適用される頭部表示は一つの情報ですが、残りのつながりを置き換えるものではありません。
ISO 16228:2017 はファスナーの検査文書の種類を扱い、ISO は 2022 年に現行版であることを再確認しています。公開範囲からも、要求する文書の種類と内容は、注文、関連規格、指定要求に結び付けて扱う必要があります。受入品やロットとの対応が示されない文書は、値がもっともらしく見えても材質疑義を解消しません。
- 管理要求を読む。 製品規格又は図面、正確な材質・ステンレス鋼表記、必要な強度区分、寸法、表面処理、要求検査文書を記録します。
- ロット識別を保持する。 サンプル ID、包装表示、数量、書類番号の対応を崩さず、確認中の品物を受入済み在庫へ混ぜません。
- 検証する問いを限定する。 材料系、指定化学成分、ISO 3506 区分、機械的性質、文書追跡性のどれが争点かを明確にします。
- 適切な経路を合意する。 注文要求と適用規格に基づき、必要に応じて適切な能力を持つ試験機関又は合意済みの検証者を使います。単一の携帯機器を万能判定器として扱いません。
- 合意した受入基準で処置する。 関連証拠を注文及び合意手順と比較してから、受入れ、隔離継続、再試験、特採申請又は拒否を決めます。
可能性のある材料・加工上の説明は、適合又は不適合の証明ではありません。「冷間加工の可能性」があっても、失われた追跡関係や注文上必要な証拠の代わりにはなりません。
供給者が追跡できる形で情報を送る
「磁石に引かれた」だけでは技術回答に不足します。少なくとも次の項目をまとめます。
注文上の識別: 製品規格/図面、正確な材質又はステンレス鋼表記、必要な強度区分、寸法、表面
受入品の識別: 品名、適用される頭部表示、包装/ロット表示、数量、入荷参照
書類: 文書番号と包装又はロットへのひも付け
磁石の観察: 磁石/器具、接触又は距離、部位、サンプル数、再現結果、写真/動画
管理状態: 区分保管、サンプル保持、混載の有無
求める回答: 追跡関係、証拠の説明、合意可能な検証経路、処置基準
これは編集上の作業書式であり、ISO の様式ではありません。契約、購入者の品質システム、合意済みのクレーム手順に合わせて調整してください。
Wohe が支援できる範囲
Wohe Fastener は、購入記載と製品規格、寸法、材質表記、強度区分、表面処理、包装表示、要求文書を照合し、供給者回答や合意した追加検証に必要な情報を整理できます。最終的な鋼種区分とロットの判断は、適用要求と追跡可能な証拠に基づく必要があり、写真、磁石の動画又は営業説明だけでは決まりません。
追跡可能な確認を準備する
要求、ロット識別、観察記録を一緒に送る
管理された注文書又は図面、製品規格、正確な材質表記、必要な強度区分、寸法、表面処理、包装/ロット表示、書類番号、影響数量、磁石の客観的な観察記録をご提示ください。
一次資料と確認日
規格のライフサイクルと材料技術ページは 2026-10-13 に再確認しました。使用した一次資料は ISO 3506-1:2020、ナットに関する ISO 3506-2:2020、ISO 16228:2017、Outokumpu と Carpenter Technology の公式材料技術資料です。Wohe のサイトは会社の対応範囲と問合せ入口の確認にのみ使用し、製品ページの磁性に関する表現は技術根拠にしていません。